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インタビュー

リレーインタビュー「飲食の侍たち」有限会社カフェクリエイト 代表取締役 八尋 豊

2011年5月。震災以降の八尋社長との再会は、河北新報社で行われたセミナーだった。
そのセミナーの後、八尋社長のお店「VERANDA」で会食をしようという流れになった。
そこで、飲食を愛する者たちによる飲食談義が始まった。
テーマは、「震災復興のために我々飲食店は何ができるか」。
舵取りをしたのは、フードリンク安田正明社長。
「ほかの地域は、街コンで街を元気にしている。仙台もこんなときだからこそ一致団結すべきだ。ただ、私が‘やりなさい’とはいえない。自分たちで決断しなさい。」
厳しくも当たり前の現実を突きつける一言だった。

それは、私たちにとっては目から鱗・・・いや、本当は、やらなければならないことだということは、みんながうすうす気づいていたけれど、そこまで心も頭も回らない、そんな時期だった。

いま思えば、私がその場にいられたのはある意味奇跡的で、いま思えば運命だったのかもしれないとさえ思う。
仙台飲食を背負って立つ、いままででは逢うこともできなかったような経営者たち。
みんなが自分たちの意見を情熱的に交わしているなかでの八尋社長の一言。
「てい子は俺たち飲食の最強の応援団なんだから、どう思う?」

空気が止まった。心臓が飛び出そうだった。でも、嬉しかった。
私を一員として認めてくれているのだと思った。
同時に、期待に応えたい!この人たちと一緒に歩んでいきたい!そう思った。

私の「役に立ちたい」スイッチは、こうしていとも簡単に、八尋社長にポチッと押され、いまに至る。八尋社長は、私に飲食人の素晴らしさを教えてくれた恩人なのだ。
あのとき、もし八尋社長が私を飲食の応援団だとその場にいるメンバーに話してくれなかったら、いま私がこうしてフードスタジアム東北の編集長になることはなかっただろう。
それからも、八尋社長には感謝してもしきれないほどの経験をさせていただいている。

今回はそんな私の「飲食人大好き」のルーツである八尋社長にインタビューをお願いした。

※このインタビューはバトンリレーで次の飲食人へ繋ぎ渡されます。
「飲食人の横の繋がりを大切にしたい」という思いで始めます。
では、まず、八尋社長のインタビューをご覧ください。

【飲食の侍、1人目。】

プロフィール
11269492_603058366464444_989949718_n八尋 豊(やひろ ゆたか)
1972年7月11日、仙台市生まれ有限会社カフェクリエイト 代表取締役
一般社団法人 仙台とどけ隊 理事
一般社団法人 東北食の力プロジェクト 理事第4回・7回 S1サーバーグランプリ東北地区準優勝
第9回居酒屋甲子園東北地区優勝・全国大会準優勝

運営店舗
グラスワインと折衷料理 土龍(モグラ) →食べログ
地場ビストロ料理とシャンパーニュ VERANDA →食べログ
生産者直結・農家の行商人 畑のあぐり →食べログ
2015年10月30日 一番町にカフェをオープン予定

1、飲食を始めたきっかけ
もともと独立志向が高く、何かで社長になりたいと考えていた。
そんなときに、ラグビーショップをオープンさせる話が舞い込んできた。
高校生から大学生までずっと続けているラグビーに愛情はあったし、これならやれる!と思った。しかし、いろいろあり、その話は途中でなくなってしまった。
そのような現状を知人に何気なく話したところ、ある飲み屋に連れて行かれた。
そこは、「J’Z CAFE’」だった。
ちょっと飲みに行ったつもりが、面接日まで決まってしまった。
断りに行ったつもりが、せっかくだから経験させてもらおうと、翌日から働くことになった。
そんな形の入社だったが半年で店長へ昇進、それから1年半後「JZ CAFE」をオーナーから譲り受け独立。(このとき、八尋氏27歳)

2、影響を受けた人
「今の自分があるのは誰のおかげだろう?」、そう考えると切りがなくなる。
お客様に喜んでいただくお店をつくることに目覚め、「この人は」という2人を知り、その人間像に憧れを抱くようになった。
それは、株式会社ゼットン 稲本社長と株式会社グローバルダイニング 長谷川社長だ。
稲本社長からは、名古屋を全面に打ち出した地方からの発信力。長谷川社長からは飲食業界の未来へ勇気と希望を与えていただいた。
さらに、影響を受けたお店もある、「代官山モンスーン」だ。
その当時、国分町では、お客様にお水を出すことは儲けにつながらないこととして歓迎されていなかった。しかし、代官山モンスーンでは目があった際にお客の雰囲気を感じ、お水を提供してくれた。それが、お客様に喜んでいただけることだと気づき、仙台に帰って実践した。接客サービスの意味を深く知る、いい機会だった。

3、飲食をやめたいと思ったことは?
東日本大震災のあとは、本当にやめようと思った。
頭をよぎったのは、やはり社員のこと。社員をどうにかして守りたい、その思いが強かった。
しかし、現実はお店を開けるに開けられない。6月にやっと2店舗再開、1店舗はビルの耐震問題で11月までクローズ。お金も底をつきはじめた。
ある種、現実逃避に走っていたのかもしれないが、「一般社団法人 仙台とどけ隊」として被災地支援に没頭した。炊き出しをやっているうちは自社のことを少しだけ、忘れることができた。
そのうち、居酒屋甲子園の仲間が入れ替わり炊き出しに参加して、力を貸してくれた。
「この仲間達にお願いをしたら、最悪、社員を引き取ってくれるかもしれない」
飲食店の経営者仲間がいることがやけに心強く、「なんとかなるさ」と思えるようになった。
まだ先が見えないなかではあったが「社員のためになんとかする!」そう思えたのは、居酒屋甲子園の仲間がいてくれたからだと、今でも感じている。

4、飲食をやっていて幸せを感じるときは?
11225898_603058186464462_721235052_n震災を経験したことによって、「生きていくありがたみ」というものを以前よりも感じるようになった。それは、人との繋がりによって自分が生かされ、生きていることを知ったからかもしれない。
昨年(2014年)の居酒屋甲子園で、生産者と一緒に壇上に上がることとなった。その時の生産者の言葉が今でも胸に残っている。「お客様が自分の作ったものを目の前で喜んで食べてくれる。その声を聴いて、野菜を作るモチベーションが変わった」。
全てはここに表現されていると思っている。それを感じてくれた生産者がいることに確信を得た。兼ねてより生産者の顔が見えるお店を目指して取り組んできたが、お店に来てくれたお客様と生産者を本当の意味で繋げることができたら、生産者の活動に少しでも興味をもってくれたら、日本の食文化は大きく変わる。そのためには、飲食店はリアルなメディアとして、そういった活動を全国にも発信していかなくてはならないと使命を感じている。
そう考えると、飲食をやっていて幸せなのは、「やり続けられていること」なのかもしれない。そこに想いがある以上、ずっと続けていきたいと考えている。

5、今後の野望は?
「食の未来は飲食店から変えられる」と本気で思っている。
飲食店は、リアルなメディアであり、直接消費者に訴えることができる場所。
今後は、いろいるな人(生産者や行政も含め)を巻き込んで、
『震災後の宮城って凄かったんだよ』と教科書に載るくらいになればいい。
自分が、というより、いま一緒にいる仲間と、これから仲間になるみんなと、全員で成し遂げたい。
それは、理屈じゃなく、どうにもならない「地元愛」だと思っている。
自社のためはもちろんだけれど、やはり、宮城のために生きていきたい。

6、自分が目指す人間像は?
ラグビーをやってきたせいか、根本にあるのは「all for one ,one for all」という気持ち。
目立とうという気はないが、自分が目立つことで自分と関わる生産者や仲間たち、関わる人たちを知っていただけるなら、目立つこともいいだろうと考えている。
みんなでいい影響を与え合いながら、みんなでhappyになりたい。
今自分が取り組んでいる生産者との関わり方も、地方の方々にはどんどんマネをしてほしいし、そうすることで地方に新しいことが生まれたり、地方が元気になったりするきっかけになれば嬉しい。
個人的には、自分の葬式のときに「八尋に逢えて良かった」と言ってもらいたい……。それくらいかな。

7、飲食を始めたころ(独立したころ)の自分へ声をかけるとしたら?
実は、後悔らしい後悔はしていないというのが事実。
敢えていうのならば「調子に乗るなよ」というだろうけれど、実際は調子には乗れなかった。世間知らずゆえの失敗もたくさんしたけれど、叱ってくれる人が周りにいてくれた。
「腰の低さがプライドの高さ」と、いつも感じていて、謙虚であることに努めた。しかし、相手にとってプラスになることや、大事な人を傷つけられたときには、しっかりと言うべきことは言うように心がけている。

8、飲食業で大切なことは?
プロ意識。
つまり、お金をいただく意識。
お金をいただくことに慣れることなく、商品価値が適正かどうか、自問自答を繰り返すことが大事。美味しいのは当たり前。そのうえでトータルバランスがいい状態で提供できているかどうか。盛り付けにしろ、接客にしろ、目の前のお客様に本気で喜んでもらいたければ、今よりもっといいものを提供できるはずだと考えている。

9、好きな本は?
「あなたの夢は何ですか?」池間哲郎 著 →Amazon

10、フードスタジアム東北に期待することは?
飲食の情報発信はもちろんですが、人•街•店の“東北らしさ”を引き出してほしいし、発信していただきたいと思っている。

11、次にバトンを渡したい人は?
居酒屋ちょーちょ
店主 長尾 一寿 →食べログ

ちょーちょさんが仙台、路地裏の大繁盛店であること。
ちょーちょさんを見ていると、人がつくりあげる空気感とは本当に大切だと感じる。
そんな店をつくる経営者の考え方を自分も学びたいと思っている。

(取材=澤田てい子)

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