‘3月11日’というと東北人は動揺する。
「この日にどうしてもオープンさせたかった」と「トリとヤサイとサケ ともやん」
オーナー兼店主の高橋智章氏は言う。
震災から4年経ち、自身の実家が石巻ということもあって、この日を風化させたくない、宮城の美味しい食材を広くたくさんの人に知ってもらいたいという想いが強くなったという。
早い時間には30代から40代の会社員やOL、遅い時間には近隣の方・日本酒好きな男女をターゲットに、「地産地消」を掲げたメニュー構成で提供。
「仙台の人は‘地元愛’が本当に強い。だからこそ、石巻が地元の自身の考えや想いが伝わりやすい」と高橋氏。地産地消であることのストーリーが、お店の活気を物語っている。
日本酒は全国から取り寄せ約150種類が常備してあるが、その中でもやはり宮城の日本酒にこだわりを持ち22蔵から取り寄せ、約30種類以上は提供している。
日本酒好きの心をわしづかみにするその徹底した知識と品揃えに、連日満席だ。
入口は、「たくさんの人に地元の食材と日本酒を愛してほしい」高橋氏の想いを表したような間口の広さ。玄関先の大きな杉玉がこれからいただける日本酒の美味しさを予感させる。
店内には仙台発祥のコの字型の炉端のカウンターがあり、それを取り囲むように4人席のテーブルが並ぶ。35名ほどで満席になってしまう店内だが、古材を使うなどして落ち着いた居心地のいい空間に仕上がっている。
高橋氏は高校卒業後、アルバイトとしてモスバーガーのFCに入ったことがきっかけで
飲食業に携わる。その当時はまだ飲食の道に進むことは考えておらず、単なるお金を稼ぐための手段だった。しかしお客様の「ありがとう」という感謝の言葉に感動し、飲食業の素晴らしさを知ったという。
もともとラーメン好きだったことも功を奏し、その後宮城でも有名なラーメン店「本竈」で働くこととなる。当時の同期仲間がどんどんラーメン屋で独立していく最中、自身の強みを分析。ラーメン屋でありながら、お酒が大好きだった高橋氏は、様々な資格(焼酎利き酒師、利き酒師、日本酒学講師、日本酒ナビゲーター、酒匠、専任テイスター)を取得。
その後第3回世界利き酒師コンクールに出場しセミファイナルまで勝ち残る。
東京では「絶好調てっぺん」吉田氏のもとで修行し店長業務、マネジメント、料理を学び、さらには、日本酒の文化を正しく伝える伝道師を増やす使命に燃えた。
そして奥様である麻子さんに出会い、お互いが飲食でお店を持ちたいという夢を持っていることから二人でお店を作りたいと強く思い描き始めた。
麻子さんも高校を出てからずっと飲食で働いており、独立前にはレストランサービスと東京の繁盛店での修行の為に「俺の株式会社」に入社。銀座の俺のイタリアンJAZZ、新店の俺のイタリアン東京の立ち上げにも関わりスキルを磨いていた。
高橋氏はその後、自身が独立するためには料理の修行が必要と判断し「どろまみれ」へ転職、体が壊れるまで働いた。
その後、ようやく仙台で現在の物件に出会ったという。
官公庁や病院がほど近く、住宅地があり、地下鉄北四番丁駅からもそう遠くないこともあり、自身のビジョンを投影できる立地だと確信した。
「地産地消」を売りにするメニューは、「白石の竹鶏一黒シャモの焼き鳥」1串180円~、「野菜ソムリエ グリーンサラダ」580円、「本物の冷やっこ」480円など。
竹鶏一黒シャモを焼き鳥にしているお店は他になく、野菜ソムリエの資格を持つ高橋氏と同氏奥様のセレクトした新鮮野菜やお豆腐は、そのストーリーとともに美味しさでお客様を魅了する。
ドリンクは、宮城の日本酒をはじめ全国の日本酒がずらりと並ぶ。
60ミリ290円、90ミリ390円、120ミリ580円、とリーズナブルでありながら、本格的な品ぞろえ。ここでも高橋夫妻の利き酒師ならではのセレクトが際立っている。
提供前には必ずテイスティングをし、確かな味を正しく伝えることに余念はない。
「自身と妻の共通の夢が詰まったお店です。2年後には会社を法人化させ、2号店、3号店をドミナント形式で展開していきたいです。業態はまだ明確に考えてはいないが、日本酒BAR も念頭に入れている。地元の食材をどんどん使って、地域全体でWIN-WINになれるような取り組みをしていきたい。現在はお店の中のことだけで手いっぱいでできていないが、将来的には、他先輩方がやっているような外への発信もできるようになっていきたい。日本酒の文化を語り継げる人たち‘利き酒師’を増やして、外国の方々に聞かれたときや、飲食を深く知りたいと考えている人に聞かれたときに困らないような、日本酒を伝える伝道師を増やしていきたい。」
スタートを切り、走り出した高橋氏はそう熱く語る。
高橋氏の「地元愛」と「日本酒文化への熱い想い」が融合した同店。
宮城県民ならば誰でも一度は行ってみたくなるし、誰でも応援したくなること必至だ。
(取材=澤田 てい子)
店舗データ
店名 | トリとヤサイとサケ ともやん |
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住所 | 宮城県仙台市青葉区木町通2-1-55 第八丸昌興業ビル1F |
アクセス | 仙台市営地下鉄南北線 北四番丁駅 北2番出口 徒歩1分 仙台市営地下鉄南北線 勾当台公園駅 北1番出口 徒歩10分 |
電話 | 022-725-8458 |
営業時間 | 月~金 17:00~翌1:00(L.O.24:30) 土 17:00~23:00(L.O.22:30) |
定休日 | 日曜日 |
坪数客数 | 19坪35席 |
客単価 | 3500円 |
運営会社 | トリとヤサイとサケ ともやん |
関連リンク | ともやん(ぐるなび) |
関連リンク | ともやん(FB) |