事業承継を決めた理由
仙台市内で「伊達酒場 強太朗」「伊達な仙台炉端 強次朗」「酒蔵 強三」「伊達な食堂 きょーしろー」の4店舗を展開する(有)KYOTAファクトリー(仙台市青葉区、代表取締役:佐々木強太)は、2021年7月2日、仙台市青葉区木町通2丁目1番55号に、【#05阿部青果店】をオープンした。2020年3月からの長引くコロナ禍で居酒屋業態は疲弊し、先行きも不透明な中もがき苦しんできた。同社も例にもれず倒産の危機を免れようとランチ営業、お弁当販売、コッペパン販売、フルーツサンド販売等、思いつく限りのことを社員一同取り組んできた。
そんな中、自社の取引先である八百屋が2021年3月末で廃業する知らせが入る。飲食店も厳しいがまだ協力金という望みがある。しかし、飲食店を支える業者にはその希望すらない。その事実を改めて痛感した瞬間だった。自分たちにできることはないのか?八百屋の担当者をどうにか救うことはできないのか?「自分たちが選べる唯一の答えは、八百屋を事業承継するという、それしかありませんでした」と佐々木氏は言う。
八百屋を継ぐということ
しかし今までの飲食店向けの卸だけではこれまで通り立ち行かなくなるのは目に見えている。やればやるほど薄利多売。他の卸業者やスーパーと肩を並べて同じ売り方をしていては本業である飲食店の利益まで圧迫しかねない。そこで考えたのが、今まで取引していた飲食店への卸業はそのままに、一般のお客様にも居酒屋が使う新鮮な野菜を販売することにし、他にはない新しい価値を提供する八百屋を作ること。スケールメリットだけを考えたわけではない。これまで仕入れも配達も担当してきた目利きの八百屋がそのまま業務を担当することで間違いのない商品を提供できる安心感を持たせること。店頭には今まで居酒屋で培ってきた接客力の高いスタッフを配置して、より身近な会話からお客様のニーズに応えていくこと。そうすることでただ安いだけではない、古き良き日本の商店街にあるような顔が見える八百屋として事業を継続できるのではないかと考えた。母親の雇用創出という課題
実は佐々木氏にはもう1つ解決したい問題があった。それが雇用の創出だ。会社が長く継続するに従い、卒業するスタッフは増えていく。学生アルバイト、フリーター、みんな自分たちの生活があるので仕方のないことだったが、それは寂しくもあり、母親になると戻って働く場所もない。それならば、新しく働ける場所を作ってあげたいという気持ちにもつながっていた。そこで今回、#05阿部青果店をオープンさせるにあたりちょっとした時間を使える元バイトやフリーターの人たちに声をかけてみることにした。みな、結婚していたり母親になったりと環境が変わっていたが、二つ返事で引き受けてくれる人が多かった。
佐々木氏が10年ほど前に現場の最前線で一緒に働いていたメンバーが多く、信頼のおける仲間たちだ。中には小さな子供がいるけれど一緒に働きたいと申し出てくれる人もいた。片道2時間かけて通ってくれることを決めたスタッフもいた。「子供を迎えに行くまでの2時間だけでも一緒に働きたいから」彼女の言葉に胸が熱くなったという。
佐々木氏は言う。「昔は子供をおぶりながら仕事をするお母さんが多かった。今だってそういう働き方があってもいいと思う。それに、今回のスタッフは小回りも気も利くいい子たちがそろっている。だから商品や接客に関しては安心して任せたいと思っている。何より自分自身がまた一緒に働けることが嬉しい。」
『阿部青果店』コンセプトとメニュー
卸の青果が直営する八百屋とフルーツパーラーの二毛作業態として目利きの店主が選んだ野菜や果物をシズル感を演出して販売する。近隣スーパーと競合するのではなく独自の付加価値でファンを作る。また今流行のフルーツサンドをはじめ、野菜サンド、サラダ、お惣菜、シェイク、パフェ、サワー等も順次販売予定。メニュー構成(オープン時情報)としては、八百屋が作ったフルーツサンド(映え,MIX,パイン,赤肉メロン,バナナ,シャインマスカット)(529円~961円)
八百屋が厳選した自家製野菜サンド(ハムチーズ,テリチキ,スモークサーモン)(529円~853円)
フルーツがゴロゴロはいったソフトクリーム(メロン,バナナ,パイン,シャインマスカット)(410円~961円)
(取材=澤田てい子)
店舗データ
店名 | #05阿部青果店 (あべせいかてん) |
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住所 | 仙台市青葉区木町通2丁目1番55号 藤野屋ビル1F |
アクセス | 地下鉄南北線北四番丁駅から徒歩5分 |
電話 | 022-274-5324 |
営業時間 | 11:00~19:00 |
定休日 | 水/第一日曜 |
坪数客数 | 19坪(4名席1席、カウンター10席) |
運営会社 | 有限会社KYOTAファクトリー |