きっかけは震災後、一人の経営者との出逢いだった。「野菜を主役にした店をつくりたい。そして宮城の野菜の店といえばここしかない、と言われる店にしたい」という前職の社長の言葉にどう応えていくか、どうしたら期待を超えられるか、そればかりを考えていた。今でこそたくさんの野菜生産者とお付き合いできることになったその会社も、その当時声をかけられる生産者は3社ほどしかなかったという。そこからの行動は早かった。道の駅に通い、食べてみて旨いと感じた野菜を作っている生産者に声をかけ、直談判をする日々。その積み重ねにより、気づけば最大で200社近くの生産者との繋がりができ、野菜も生産者も生かす会社の料理長として一翼を担った。その会社とは、言わずと知れた『カフェクリエイト』八尋豊氏の会社だ。奥村氏は、一皿一皿に想いを込めて、お客様の感動のために野菜に新たな命を吹き込む提供の仕方を考えるとともに、調理法はいかにシンプルでかつ野菜本来の味を味わってもらえるかに徹した。他にはない唯一無二の仕上がりを目指し、八尋氏がイメージする以上のものを形にすることに命を懸けていた。
2016年、尊敬できる生産者との出逢いから「農家レストランをやりたい」という夢の実現に向けて動き始めたときのこと、当時料理長を務めていたカフェクリエイトの1店舗である「畑のあぐり」が閉店することになった。農家レストランを開店させるには時期尚早、どうすべきか悩んでいるときに、「特定非営利活動法人 桑の木」として障害者支援をしているカフェの調理指導をしてくれたら夜は店舗を自由に使ってください、という申し出が来た。それが現在の奥村氏の店舗『野菜屋カフェヴェルデ』である。
店舗は昼間と兼用で、野菜メニューを中心とした明るいカフェ、といった雰囲気。いままではディナー営業をしていない店舗だったため、そのイメージを払しょくすることが目下課題となっている。しかしながら、野菜を生かす独創的なメニューは相変わらずお客様に驚きを与えてくれるものが多数、しかも仕入れによって日々研究され提供されている。その中でも定番となったメニューは『畑のお通し 350円(税込)』『人参ステーキ 500円(税込)』『玉ねぎのロースト 500円(税込)』『インカの目覚めのフライドポテト 550円(税込)』。その時仕入れた野菜に合わせた調理法で、見え方も味も違ったものができる。ドリンクは料理に合わせて提供しているが、特に地元・秋保ワイナリーのワインを常用。地元に根差した飲食店であり続けるこだわりを強く持っている。また、昨今ではアルコール離れが起きていることや自店舗がカフェであることからソフトドリンクにも力を入れており『農家さんのハーブを使ったデトックスウォーター (季節により価格変動あり、要問合)』にもこだわっている。
15歳から飲食業界に携わり、仙台はもちろん、東京・横浜、20軒以上の飲食店で修業を積んできた奥村氏。
最初のころは「安くて新鮮とは言えない食材を、どう価値の高いものにするのかが料理人の腕だ」と教わりその通りだと思い込んでいた。しかしたくさんの出逢いの中で、「本当にいい食材を、どう価値を付けて提供するのか」ということに気づくことができた。料理人の技術だけではどうにもならない、素材そのものの良さや生産者が見えるストーリーが必要だと知った。
「まだまだ試行錯誤。料理人としてもっともっと腕も磨きたいし、作業センスを上げていきたい。」と奥村氏は言う。将来の夢である「尊敬する農家さんの元で開店する農家レストラン」をいつオープンさせるに至るのか、『野菜屋カフェヴェルデ』で経営者として、料理人として、どれだけお客様に感動していただけるのか、これからが勝負どころだ。
(取材=澤田てい子)
店舗データ
店名 | 野菜屋カフェヴェルデ |
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住所 | 仙台市若林区荒町67-1 |
電話 | 022-724-7422 |
営業時間 | 18:00 -23:00 |
定休日 | 水曜日 |
坪数客数 | 16坪24席 |
客単価 | ディナー2,500円 週末のみランチ開始予定♪ |