震災であきらめた夢
「震災前から計画はしていたんです。物件も契約寸前まで行って…。」8年前の東日本大震災。その日がまさに物件の契約日だった。それまで温めてきた飲食店への想いを実現する一歩を踏み出す予定だった。しかし、それは起きてしまった。人生で体験したことのない大きな揺れ、今後どうなるかわからない不安。「飲食をやるべきではない」と言われてる気がした。それまで勤めていた会社の人の好意で、転職支援会社へ再就職。目の前にいる大切な人達に寄り添うためにキャリアカウンセラーの資格を取得し、コーチングを学んだ。誰かの愚痴を聞いたり、正しい知識のもとにアドバイスをすることが自分に向いていると感じた。そして同時に、「やっぱり飲食店のカウンターでこの知識を生かして接客をしたい」と強く感じるようになった。2018年1月、転機が訪れる
独立開業支援セミナーに参加。事業計画を練り、自分の夢を声に出していった。震災前のように1人でコツコツ積み上げる方法ではなく、たくさんの人に「飲食店をやりたい」と伝えることで応援してくれる人たちが増えてきた。それは自分でも驚くほどの変化で、震災前の自分では考えられない人脈ができ心の支えとなった。2018年7月末、会社を退社し物件をもう一度探し始めると、「こんないい物件は探してもそうはなかなか借りられないよ」と周囲からも太鼓判を押されるほどのタイミングで、自分の理想通りの物件が見つかった。9月末のことだった。仙台銀座に念願の飲食店をOPEN
仙台銀座。仙台駅から徒歩7分、ノスタルジックなその横丁は数十件の飲食店がひしめき合っている。夜になると、店から聞こえる音楽や談笑の声で賑やかな昔ながらの場所。東二番町通り側の入り口から入ってだいたい10メートルくらい歩いた右手2階。急な階段を上ると『お菜晩酌 志ほ』はある。カウンター8席、テーブル席1席(ご予約時のみ解放)の小さな店。カウンターに並べられた数種類のお菜はその日の仕入れや季節によって日替わりで作る。「お菜盛り合わせ(3種)950円(税別)」「お菜(単品)400円(税別)」、「お酒のあて 200円~(税別)」いかにも酒飲みが好きそうなメニューだが、夕食代わりに立ち寄る単身赴任者やビジネスマンも多いことから「ごはんもの 400円(税別)」も用意している。飲み物は東北6県の「日本酒 グラス120㏄650円(税別)」がメイン。女将の志穂さんとの会話を楽しみながら過ごす時間はまた格別だ。「飲食人らしくないってよく言われるんです」開業するまで飲食とは全く違う経験を積んできた志穂さんだからこそ、出せる空気感。目の前のお客様に正しく向き合うその姿は凛としていて、清々しい気持ちにさせてくれる。
(取材=澤田てい子)
店舗データ
店名 | お菜晩酌 志ほ |
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住所 | 宮城県仙台市青葉区中央3丁目10-5 2階 |
アクセス | 仙台駅から徒歩7分 仙台銀座内 |
電話 | 080-2818-9497 |
営業時間 | 18:00~24:00(L.O.23:30) |
定休日 | 日曜日、祝日 |
坪数客数 | 8坪12席 |
客単価 | 3500円~4000円 |
オープン日 | 2018年12月3日 |
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